SUZETTESUZETTE

Entry

Amazing Story #03ABC会議

成果は、新商品開発から
復興支援まで。
全部署の責任者が集う
「ABC会議」。

企業経営において効率化は重要だが、一方で弊害を生むこともある。企画や製造など職域で分けた各部署が、互いに何をやっているのか把握しづらくなることがその一例だ。昨今では、その課題を解消するために全社横断のプロジェクトを組む企業も増えている。シュゼットが取り組む、全部署の責任者が集まる「ABC会議」もそのひとつだ。実施するにいたった経緯やその成果とは。各部門の責任者としてABC会議に参加する3名に話を聞いた。

Member

ばらばらだった
足並みがそろった。

「ABC会議」とは、企画、販売、購買、開発、製造部門の次長・部長が一堂に会し、商品開発から各種のキャンペーン、社会貢献活動まであらゆる企画を一気通貫で話し合う場だ。導入前は各部署が独自に動いていたため「ちぐはぐになってしまうことも多かった」と語るのは、購買部・部長のOさん。

O:たとえば、新商品開発で言えば、もともと企画部門からスタートする流れはありました。しかし、市場投入までのスケジュールや原価の見立てが甘く、結局実現しないということがつづいていたんです。しかし、ABC会議をするようになってからは、すべて企画段階で後工程の部門ともすり合わせが済んでいるので、スケジュールに無理がなく、かつ利益も確保できる仕組みが整いました。

また、ABC会議が導入されたことで、販売の現場から新商品が生まれるという新しい流れもできたと委託・卸販売部門の次長・Sさんは言う。

S:店舗が入っている百貨店では毎年夏に「レモンフェア」をやるのですが、私たちは商品がなく参画できていなかったんです。お客様にお店のことを知っていただく貴重な機会になると思い、レモンをつかった新商品の企画をABC会議の議題に挙げカタチにしていきました。結果は、売り切れが出るなど販売計画を大きく上回るヒット。販売の現場から新商品が生まれた初めての事例になりました。

そんなシュゼットの「ABC会議」を「マーケティングプロセスとして正しい」と話すのは、事業会社を経て2021年に入社したマーケティング部・部長のMさんだ。

M:私が入社したときにはすでにABC会議はありました。現場のリアルな意見が反映される仕組みになっていることが素晴らしく、お手本のような取り組み。多くの会社を見てきましたが、そのなかでもABC会議は優れていると感じます。

ABC会議の源流。

「ABC会議」の前身となるような全社横断の取り組みは、2012年にスタートした東北の復興支援に端を発する。そのきっかけとなったエピソードをSさんはこう振り返る。

S:東北の震災が起こったとき、私の同期だった販売の女性が「私たちには何もできないんですか?」と社長に進言したことからはじまったと聞いています。いち販売員がそんな思いで働いてくれているのか、と。シュゼットは1995年の阪神・淡路大震災を経験し、当時多くの方々の協力のおかげで工場や店舗を再開できたことから、社長のなかにずっと「いつか恩返ししたい」という思いもあったそうです。

「スマイルフォー東北-フロム芦屋」を掲げ、現場のいち社員の声からはじまったシュゼットの復興支援活動。物資を届けることからスタートし、復興支援のためのチャリティ商品も企画。通常よりもひとつ少ない焼き菓子の詰め合わせを正価でご購入いただき、生じた差額だけでなく、同額をアンリ・シャルパンティエからも寄付してチャリティ費用にあてる仕組みだ。これまでに食品メーカーへの生産設備の寄贈や、東北の食材を東京のレストランに営業するための費用として活用されるなど支援の幅は広がっている。Oさんも実際に東北へ足を運んだひとりだ。報道とは異なる現実に圧倒されたという。

O:風評被害に遭った果物などをシュゼットで買い取り、お菓子にして全国の人に知ってもらおうという活動をしていました。「ビニールハウスが流された」「ここで人が亡くなっていた」など現地で聞く生産者のお話はテレビで知るよりも厳しい状況で、無力感に襲われながらも、少しでも力になれればと思ったのを覚えています。あれから何度も足を運んでいますが、ハウスが再建され、また以前と同じように栽培されている様子を見たときは、すこしは貢献できたのかなと実感できました。

力になりたいという思いからスタートした「スマイルフォー東北-フロム芦屋」。前例のない取り組みに、活動を進めるなかで予期せぬこともたくさんあったという。しかし、そこで存在感を発揮したのもABC会議。各現場で感じた課題を持ち寄り、走りながら軌道修正を重ねていった。

「スマイルフォー東北」
12年目の支援。

手探りの状態からスタートした「スマイルフォー東北-フロム芦屋」も、2023年で12年目を迎える。これまでの活動は大きく4つのフェーズに分類されるとMさんは語る。

M:支援活動は一過性にしてはいけないと、当初から支援のカタチを変えながら10年はつづけるという決意で取り組んできたそうです。はじめは、有志企業が集まってコンテナいっぱいの焼き菓子を届けることから。次に、お客様の力を借りようと寄付つきのお菓子を販売。その次に取り組んだのは、現地の生産者やデザイン会社との共創。さらに次の段階では、ひとつうえのチャリティを目指そうと、復興支援商品の売上の一部を、被災した製菓学校の生徒への奨学金として活用してもらえる仕組みも構築。嬉しいことに、その奨学金で学んだ学生が今、弊社の生産現場で活躍してくれています。

この奨学金のもととなるアンリ・シャルパンティエの「スマイルフォー東北‐フロム芦屋」東北復興支援商品は、公益社団法人日本フィランソロピー協会が主催する「第18回企業フィランソロピー大賞」において『想いをつなぐスイーツ賞』を、さらに一般社団法人 ソーシャルプロダクツ普及推進協会が主催する「ソーシャルプロダクツ・アワード2022」において『ソーシャルプロダクツ賞』を受賞した。まさに「10年は続ける」としてきた復興支援活動が評価されたと言える。

ABC会議がシュゼットの
可能性を拓く。

商品開発から復興支援まで、幅広い活動において重要な役割を果たしてきた「ABC会議」。その意義についてMさんはあらためてこう語る。

M:これまで多くの会社を見てきましたが、販売とマーケティングが仲のいい会社ってそう多くなかったんです。でもシュゼットでは不思議なことに、ABC会議で決まったことに対して文句を言う人は一人もいない。他人まかせにすることなく、一人ひとりが当事者意識を持って動いているのを感じます。もともとの社風に合っている取り組みなのかもしれないですね。全社的にチャレンジできることのスケールがどんどん大きくなっていることも、ABC会議が機能している何よりの証ではないかと思います。

今後は次長・部長クラスだけでなく、より現場に近い社員の参加も視野に入れているという。ばらばらだった各部門のベクトルがひとつになり、大きな推進力を生んできたABC会議。これからさらにシュゼットの潜在価値を引き出してくれるだろう。

Amazing Story